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朔風払葉 | きたかぜこのはをはらう | 秋冬に吹く風 | 風の名 | 朽葉色 | 七十二候 | 歳時記


記事提供:おふぃす・ふぇにっくす

朔風払葉 きたかぜこのはをはらう

西高東低の気圧配置の日が多くなり、それに伴い北寄りの季節風が吹き出して一段と朝晩の冷え込みが顕著となってきました。
暦も27日より小雪の次候「朔風払葉 (きたかぜこのはをはらう)」となります。
冷たい北風が、木々の葉を落とす頃。朔風とは北風のことです。地面いっぱいに広がる落ち葉と、葉を落とした木々は冬の景色の象徴であり、季節の移り変わりが感じられます。

朔風払葉 (きたかぜこのはをはらう)

ここにいう「朔風」とは北風のことで木枯らしのことを指します。
その冷たい木枯らしが紅葉した木の葉を落としていく頃という意味です。

朔風払葉 きたかぜこのはをはらう

「北」に何故「朔」という字をあてているかというと、もともとは「はじめ」とか「元に帰る」という意味で使われる字ですが、十二支の方角を充てると「北」は「子(ね)」の方角で、その子(ね)は干支の最初に位置することからやがて「朔」は「北」を表すようになりました。
この木枯らしに吹きさらされ、落葉広葉樹の葉は最後の艶やかさを残しながら地面に落とされていきます。

葉を落とした木々の冬景色はどこか淋しげで、草木は一見枯れてしまったようにも見えますが、木の枝には小さな芽が出始めています。
ある意味「もののあわれ」や「無常」を感じさせ私たち日本人の琴線に触れる光景でもありますが、その反面落ち葉は「望み葉(のぞみば)」とも呼ばれ、落葉した後地面に帰り土の中で肥料となり、やがて巡り来る春には植物たちの栄養となり、こうして草木は新たな季節に向けた準備を始めます。

朔風払葉 きたかぜこのはをはらう

そんな北風に吹かれてたくさんの木の葉が舞い落ちる光景を、「落葉時雨(おちばしぐれ)」というそうです。
真っ赤に染まった木の葉が時雨のように舞い落ちる風景は、春の桜吹雪と対照的ではありますが、それはそれで美しさも感じられます。

そのような視点で地面を敷き詰めるように落ちている落ち葉たちを見ると、また違った感じが湧いてきます。

秋冬に吹く風の名前

朔風払葉 きたかぜこのはをはらう

風の名前には様々なものがあり、その数2000種類近くに及ぶと言われています。
たとえば「台風」と「野分」は両方とも強風ですが、印象がだいぶ違います。
そこで秋冬に吹く風の名前をピックアップしてみました。その名を聞けば風の表情や情景まで浮かんでくるので、まさに風情溢れる呼び名です。
こんなところにも日本語の持つ素晴らしさを感じます。

野分(のわき)
二百十日、二百二十日のころ、野の草を分けながら吹きすさぶ強風、台風。昔は台風のことを野分といいました。
雁渡し(かりわたし)
雁が渡ってくる9月から10月に吹く北風のこと。
いなさ
南よりの暴風。大雨を伴い、風水害や海難を起こすおそろしい風です。
金風(きんぷう)
稲穂を揺らす秋風はまさに「金風」。
秋風のこと。黄金色の稲穂を揺らすことに由来します。
木枯らし
晩秋から初冬に吹く冷たい北風で、木の葉が吹き落とされ、枯れたようになってしまうことに由来。気象庁で木枯らし1号が発表されると、冬型の気圧配置になったあかしです。
おろし
冬山から吹き降りてくる冷たい強風。「六甲おろし」「比叡おろし」「富士おろし」のように山の名がつきます。
空風(からっかぜ)
冬山を超えて吹き降りてくる下降気流で、冷たくて乾燥した風。関東・東海地方の冬の季節風です。

漁業者や農家にとっては風というのは常に注意を払わなければならない存在です。
どこでどのように吹くのか、海に出ても問題ないのか、農作物に被害が及ばないかなど、風の特徴を細かに捉えることが、一つの対策でした。

この時期の伝統色

朽葉色

日本語の素晴らしさと同じように、日本の伝統色では黄や赤に紅葉していた木の葉は、地面に落ちて枯れ葉となっても「朽葉色(くちばいろ)」という風雅な呼び名で表現されています。その色から派生した「赤朽葉」「黄朽葉」「青朽葉」の三色を中心に「朽葉四十八色」と言われるようにバリエーション豊かに微妙な色の違いを表現しています。

赤朽葉 黄朽葉 青朽葉

私たち日本人は、その言語や表現の中に繊細な美意識をもった世界広しと言えども唯一の民族ではないでしょうか。
グローバル化していく現代ではありますが、その日本人の心音は忘れずに持ち続けていきたいものですね。

結詞

北風と太陽

北風と聞いて浮かぶのは、イソップ童話の中にある『北風と太陽』です。
「先に旅人のコートを脱がせたほうが勝ち」という勝負を太陽に持ちかけた北風は強力な冷たい息でコートを吹き飛ばそうとしますが、旅人に前をしっかりかき合わされ、失敗します。かわって太陽が燦々と照らしたところ、旅人はホッとしたように、自分からコートを脱ぎました・・・というお話です。
長い間に内容や教訓が少しずつ変化してもいるようですが、私は、当時教えられた「乱暴に急いで結果を求めるよりも、穏便に対応した方が効果に結びつく」という教訓や「北風のように冷たく厳しい態度で相手を頑なにしてしまうより、太陽のように暖かく優しい心で対応した方が、相手が自分から行動してくれる」という教訓の方が今でも心に残っています。
新型コロナウィルス禍の中、心ならずも感染してしまった人々を非難してしまうご時世ですが、こんな時にこそこのイソップのお話を思い出したいものです。

橘 橘始黄 たちばなはじめてきばむ

暦は小雪の末候「橘始黄(たちばなはじめてきばむ)」へと移っていきます。
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